作者の言葉

Arts in fiber WHO’S WHO JAPAN
Edited & Published by Kuniko Lucy KATO
繊維の創作・日本
加藤 玖仁子・編 掲載
発行:1984年8月27日

故・太田英蔵氏の「染織史」の講義の中に、私が糸と布を媒体として。作品活動を続けて行こうと決心した、きっかけになる話があった。それは、織物が生きているというもので、その内容は次の様なものであった。

平面である布が、うねりを持つ事により、体にまとわれ、重力が加わる事により、襞(ひだ)ができ、さらに動きが加わって、襞がみだれて皺(しわ)になる。

この話を聞いたとき、この事をそのまま止どめたのが、あのギリシャのパルテノン神殿の彫刻群の襞であり、ジャコモ・マンズーの彫刻の皺であると思った。そして、あの量感を作っているものが、実は一枚の平らな布である事も知らされた。

彫刻家達の目の奥にあった布達は、うねりを持ち、襞や皺ができる事により、大いなる存在感を持った。

私は、そんな布達を、私の手で、もう一度布として表現してみたいと思った。

加藤 祐子

1984-book

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